
近年、人に関するトラブルが多くの企業で頻発しています。こうした時代には経営者や管理職のみなさんも労働基準法を中心とした人事労務管理の基礎知識を身に付けておくことが不可欠です。そこでこのコーナーでは、経営者や管理職が最低限知っておきたい人事労務管理のポイントを会話形式で分かりやすく解説していきます。今月は、女性従業員に対する母性健康管理について取り上げています。
木戸部長は、妊娠した従業員から「産婦人科を受診するための時間が取れない」という相談を受けた。そこで、会社として何らかの措置が必要なのか、社労士に相談することにした。

先生、こんにちは。暦の上では立春が過ぎましたが、まだまだ寒さが続いていますね。

そうですね。空気も乾燥しているので、風邪の予防として、うがいや手洗いを徹底しなければなりませんね。さて、今日は妊娠した従業員のことでご相談があるとお聞きしましたが、どのようなことでしょうか?

はい。先日、当社の女性従業員が妊娠したのですが、「業務が忙しく、産婦人科に行く時間がとれない」と相談を受けました。この場合、会社として何らかの措置が必要なのでしょうか。

そうでしたか。それでは法律で実施が求められている措置について順番に解説しましょう。まず妊産婦は、母体や胎児の健康のために健康診査や保健指導(以下「健康診査等」)を受ける必要があります。ただ、従事している業務によっては受診の時間を確保することが困難な場合も考えられます。そのため、会社は健康診査の受診時間や保健指導を受けている時間のほか、医療機関への往復時間や待ち時間も含め、必要な時間を勤務時間の中で確保できるような制度を用意しておかなければなりません。

そのような制度があるのですね。具体的にはどの程度の時間を確保できるようにしなければならないのですか?

はい、男女雇用機会均等法では、妊産婦である従業員が健康診査等を受診するために必要な時間を、以下の回数、確保しなければならないと定められています。
- 妊娠中
・妊娠23週までは4週間に1回
・妊娠24週から35週までは2週間に1回
・妊娠36週以後出産までは1週間に1回 - 出産後1年以内
・産後4週間前後に1回(産後の経過が正常な場合)
ただし、医師または助産師が、産後の回復不全などを理由に異なる指示をしたときは、その指示に従わなければなりません。

細かく定められているのですね。ところで、この時間は有給とする必要がありますか?

いいえ。法律では制度を設けることを義務付けているだけですので、制度を利用している時間については無給としても差し支えありません。また、女性従業員が年次有給休暇を取得することでこの時間を確保し、別途特段の請求がないのであれば、改めてこの時間を与える必要はありません。いずれにしても会社の就業規則で具体的な賃金の取扱いや手続きを含め、明確にしておくことが必要ですね。

ありがとうございます。他にも妊産婦に関して必要な措置はありますか?

はい。女性従業員が健康診査等を受診した結果、医師から指導が行われることがあります。女性従業員から指導を受けた旨の申し出があった場合には、会社はその指導事項を守ることができるようにしなければなりません。ここで考えられる指導には次のようなものがあります。
- 妊娠中の通勤の緩和
ラッシュアワーの混雑を避けて通勤することができるように、時差通勤、勤務時間の短縮、交通手段・通勤経路の変更など、通勤の苦痛を緩和する措置 - 妊娠中の休憩に関する措置
適宜の休養や捕食ができるよう、休憩時間の延長、休憩回数の増加などの措置 - 妊娠中または出産後の症状などに対応する措置
重量物を取り扱う作業など負担の大きい作業から負荷の軽減された作業への転換、勤務時間の短縮、作業環境の変更など、業務の負担を軽減する措置

なるほど、たくさんありますね。医師の指導をきちんと把握し、女性従業員に適切な配慮ができるか不安になってきました。

そうですね。確かに心配になりますよね。ただ、上記のような指導内容は、女性従業員を通じ、会社に申し出ることになっており、そのための「母性健康管理指導事項連絡カード」が用意されていますので、これを活用するとよいでしょう。通勤の混雑を避けるなどの措置が必要となる場合には、医師が、このカードに必要な事項を記入して女性従業員に渡します。女性従業員は、このカードを会社に提出して措置を申し出ればよく、これを受けて、会社も適切な対応を取ることになります。

なるほど。それなら安心ですね。まずは就業規則にこの制度が設けてあるかを確認することから始めてみることにしよう。木戸部長、よろしく。

そうですね。さっそく取り掛かることにします。

今回は、男女雇用機会均等法に定められている母性健康管理の措置について取り上げましたが、妊娠から出産までの期間には、労働基準法で以下の母性保護措置も規定されています。併せて就業規則に定めておきましょう。
1.産前・産後休業
2.妊婦の軽易業務転換
3.妊産婦等の危険有害業務の就業制限
4.妊産婦に対する変形労働時間制の適用制限
5.妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限
6.育児時間
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