
近年、人に関するトラブルが多くの企業で頻発しています。こうした時代には経営者や管理職のみなさんも労働基準法を中心とした人事労務管理の基礎知識を身に付けておくことが不可欠です。そこでこのコーナーでは、経営者や管理職が最低限知っておきたい人事労務管理のポイントを会話形式で分かりやすく解説していきます。今月は、障害者雇用に関する基本的なポイントを取り上げています。
木戸部長は先日、同業者の集まる会合で、ある企業の総務部長から、「労働局より障害者を雇用するように指導された」という話を聞いた。そこで、本日は障害者雇用に関する基本的な内容について、社労士に相談することにした。

先生、こんにちは。この時季は台風がよく発生しますね。

そうですね。ただ、そろそろ秋の気配が感じられてきましたね。さて今日は、障害者雇用について確認したいと伺っていましたが。

はい。当社の従業員数は50名ですが、当社でも障害者を雇用しなければならないのでしょうか?先日、同業者の集まる会合で障害者雇用に関する話になり、ある会社の総務部長は自社で3名雇用する必要があり、1名足りないと話をしていました。

そうでしたか。そもそも事業主は、障害者の雇用の促進等に関する法律(以下、「障害者雇用促進法」という)により一定数の障害者を雇用することが義務づけられています。具体的には、民間企業が該当する一般事業主に対しては、その常用労働者数の1.8%以上の障害者を雇用することを義務付けています。なお、この1.8%は「障害者雇用率(法定雇用率)」と呼ばれています。

1.8%ですか。当社の場合、従業員数50人で計算してみると0.9人となり1人に満たないことから、現時点において、雇用する義務は生じていないと考えて問題ありませんか。

はい、問題ありません。実際には、常用雇用労働者数が56人以上の事業所について、障害者1人以上の雇用が義務付けられているということになります。また、常用雇用労働者の定義について補足しておくと、常用雇用労働者とは雇用契約の形式の如何を問わず、以下のいずれかに該当する者をいいます。
- 雇用(契約)期間の定めがなく雇用されている労働者
- 一定の雇用期間を定めて雇用されている労働者であって、その雇用期間が反復更新され雇入れのときから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる労働者または過去1年を超える期間について引き続き雇用されている労働者

それでは、パートタイマーについては、どのように取り扱うことになるのでしょうか?

とてもよい質問ですね。かつては障害者数も常用雇用労働者数も1週間の所定労働時間が30時間以上の常用労働者が対象とされており、30時間未満の労働者(重度障害者や精神障害者を除く)について、いずれにもカウントされていませんでした。

そうなんですね。

しかし、障害者によっては、障害者の特性や程度、加齢に伴う体力の低下などにより、長時間労働が厳しい場合もあり、また短時間労働は障害者が福祉的就労から一般雇用へ移行していくための段階的な就労形態として有効であると考えられることから、平成22年7月に障害者雇用促進法が改正され、短時間労働にも障害者雇用率が適用されることになったのです。

思い出しました。そういえば昨年、法改正が行われましたね。

具体的には、1週間の所定労働時間が30時間以上であり、かつ、その雇用期間が反復更新されており、1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる場合および過去1年を超える期間について引続き雇用されている場合には正規従業員と同様に1人としてカウントします。一方、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満であり、雇用期間についてさきほどと同様の場合については、1人を0.5人としてカウントすることになりました。具体的には、下表のように障害の種類、程度および週所定労働時間で区分を行い、雇用障害者数を計算することになります。


小売業のように、正規従業員よりもパートタイマーの人数が多い企業にとっては、大きな影響がありますね。

そうですね。今回の改正により、常用労働者数が増加することになり、法定雇用障害者数が改正前よりも増え、実際に雇用している率が改正前よりも低くなる場合があります。また、これに関連して障害者雇用納付金制度も改正されています。この制度は実際に雇用している障害者数が法定雇用障害者数に満たない場合、雇用障害者数が1人不足するごとに月額5万円を納付金として徴収されるというものですが、こちらも同様に対象が拡大されており、常用雇用労働者数が200人を超える事業主が対象となっています。

この常用雇用労働者数についても、上記の1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の者については0.5人としてカウントすることですね。

はい。ただし、この改正により新たに障害者雇用納付金制度の対象となった常用雇用労働者数が200人を超え300人以下の事業主については5年間の減額特例が設けられており、平成22年7月から平成27年6月まで月額5万円の納付金が月額4万円とされています。ちなみに、障害者雇用納付金制度は平成27年4月より、常用雇用労働者が100人を超え200人以下の事業主に対象が拡大されることが予定されています。

当社も今後、従業員数が増えるかも知れませんし、法定雇用障害者数に満たない企業は、具体的な措置が求められますね。

今回は障害者雇用に関する基本的なポイントについて取り上げましたが、ここでは障害者を雇用する際に活用できる助成金制度のうち、主要なものを紹介しましょう。
- 特定求職者雇用開発助成金
障害者等をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる場合に受給できる助成金 - 障害者雇用ファースト・ステップ奨励金
障害者雇用の経験のない中小企業(障害者の雇用義務制度の対象となる56人〜300人規模)において、ハローワークの紹介により継続して雇用する労働者として、初めて雇い入れた場合に受給できる奨励金 - 特例子会社等設立促進助成金
身体・知的・精神障害者を10人以上雇用する特例子会社または重度障害者多数雇用事業所を設立した場合に受給できる助成金
なお、対象労働者の雇入れ日の前日から起算して6ヶ月前の日から1年を経過する日までの間に、雇用保険の被保険者を事業主都合により解雇している場合、助成金の支給対象とならないなど様々な注意点があります。そのため、不明点等がありましたら、当事務所までお問い合わせください。







